「こころとからだの痛み研究会」趣意書 (2026年1月改訂版)
緒言
近年、日本はまるで災害と疫病に呪われたような様相を呈している。
2011年早春、3月11日に突然マグニチュード9の東日本大震災が東北地方太平洋沖で発生し、大津
波が東北地方沿岸部を飲み込み、地獄の黙示録の様を呈した。また、福島原発の事故による長期的な困難
が、日本のエネルギー政策の在り方を揺さぶっている。
一方、2020年春以降、新型コロナウィルス感染症(コロナパンデミック)が襲来し、これに対して
人類は公衆衛生的対応とワクチンのみで事態を切り抜けようとして来た。特記すべきは、不幸にも感染し
た多くの精神疾患患者たちが、スティグマ(露骨な差別)により十分な医療を受けられずに無念の死を迎
えた。コロナ禍は2023年5月よりやっと鎮静化したこともあり、国内では感染症分類は2類から5類
に下がり一般感染症として位置づけられたが、季節型インフルエンザと変異型コロナが混在しているため
医療現場では混乱している。
地球規模では、「沸騰する地球」と譬えられる様な気候変動の影響と考えられる夏の洪水や、地震が世
界各地で頻発している。また、人的災害としては、ロシアによるウクライナ侵攻で、北朝鮮の支援を受け
て生物化学兵器や核兵器の使用が心配されている。また、中東では、イスラエルとパレスチナの衝突が再
発し、子供を始めとする多くの民間人が犠牲になっている。その結果、21世紀の国際秩序はまさに崩壊
の危機に瀕していて、恐怖が全世界に拡散している。
元来、世界は不条理に満ちていて不安と抑うつが纏わりつく。かつて、サルトル、キエルケゴール、ハ
イデッガーらの思想家が主題とした「実存の不安」は人間の根源的なものでもあり、現代は歴史的にも究
極的な不安の時代になっていると言えよう。南アフリカの哲学者デイヴィッド・ベネター氏の著書「生ま
れてこないほうが良かった」に描かれた状況を次世代に引き継がせないためにも、医療関係者(特に精神
科医療関係者)は現状を真剣に捉えて、人々の不安や抑うつを取り除く方法を考えなければならない。
当研究会は、2023年12月に公益法人「日本医学協会」の第87回シンポジウムを「人々の不安や
抑うつを癒すための精神医療を目指して」という題で共催した。今後も、従来の「痛み」の治療法を心身
両面からアプローチする方法論を追求して行くと共に、この様な活動にも積極的に参加して行く所存である。
沿革
当研究会は1988年に創設された「痛みと漢方シンポジウム」に遡る。その後、1989年に当研究会
の前身である「難治性疼痛症例ワークショップ」が独立したが、1998年に閉会となった。翌年から有
志により復活して、「こころとからだの痛み研究会」と名前を変えて現在に至っている。
目的
英国のシシリー・ソンダース氏は緩和ケア領域でTotal Painを提唱し、「痛み」を肉体的、心理的、社会的、霊的(spiritual)に分類して、「痛み」には「苦しみ(Suffering)」の要素があると考えた。一方、当
研究会では、この考え方も尊重しつつ、「痛み」を東洋医学の基本概念である「心身一如」として全人的に捉えた上で、「痛み」の集学的・包括的な治療法を研究し、世界に向けて啓発・普及活動を行うことを目的にしている。
会の構成
会員は基本的に個人参加。団体参加も可。医学、医療、薬学、福祉、介護、教育などの各関係者や、一
般の方も含めて広範な参加を呼びかけている。
会の形式
年2回(4月と10月の第2日曜日)の学術集会・総会を開催する。学術集会では講演、ワークショッ
プ、事例検討、シンポジウムなどを行い、余興として芸術アトラクション(音楽家の生演奏など)も行
う。単なる座学ではなく、自由闊達な議論を行い、最先端の知見を得て各自が持ち帰って勉強・研究に役
立つような内容とする。総会では、会の運営、プログラムの企画立案、事務事項の報告などを行う。な
お、緊急テーマ発生時には臨時集会の開催も行う。
役員名簿(顧問、世話人、監事)
顧問
大野 裕 先生
認知行動療法研修開発センター理事長、国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター、顧問、元・センター長、元・慶應義塾大学教授、医学博士(精神医学、慶應義塾大学)
大倉 多美子 先生
日本女性科学者の会幹事・元会長、国際婦人年連絡会世話人、元・慶應義塾大学医学部先端医科学研究所、薬学博士(天然物有機化学、東京大学)
小野寺 節 先生
東京大学特任教授(食の安全研究センター)、東京大学名誉教授、元・米国国立衛生研究所(NIH)上級研究員、元・ルイ・パスツール大学招聘教授、農学博士(ウィルス学、東京大学)
谷下 一夫 先生
日本医工ものづくりコモンズ・理事長、慶應義塾大学工学部名誉教授、北里大学常任理事(研究担当)
PhD・工学博士(生体医工学、米国ブラウン大学)
森 庸厚 先生
明善会飯田橋榎本クリニック・院長、前・協友会介護老人保健施設リハビリケア船橋施設長、元・ニューヨーク州立大学准教授、元・東京大学医科学研究所准教授、元・埼玉医科大学客員教授、医学博士(生殖免疫学および腫瘍免疫学、東京大学)
佐藤 武 先生
元・佐賀大学教授、元・九州大学教授、元・Otago 大学医学部招聘研究員、医学博士(精神医学、佐賀医科大学)
高野 覚 先生
本庄児玉病院院長、元・聖学院大学非常勤講師、作田明賞選考委員、元・東京大学医学部精神医学教室(東京大学理学部卒、群馬大学医学部卒)、精神科専門医・指導医、精神保健指定医
世話人
釡野 安昭 先生
緑が丘クリニック・院長、元・総合会津中央病院池見記念心身医学センター病棟医長
林 剛彦 先生
ハヤシクリニック院長、元・大阪大学医学部麻酔学教室、元・米国ワシントン大学医学部麻酔学教室
三浦 一恵 先生
大森・東京歯科口腔外科センター長、鶴見大学歯学部歯科麻酔臨床教授、歯学博士(歯科麻酔学、鶴見大学)
世話人
釡野 安昭 先生
緑が丘クリニック・院長、元・総合会津中央病院池見記念心身医学センター病棟医長
林 剛彦 先生
ハヤシクリニック院長、元・大阪大学医学部麻酔学教室、元・米国ワシントン大学医学部麻酔学教室
三浦 一恵 先生
大森・東京歯科口腔外科センター長、鶴見大学歯学部歯科麻酔臨床教授、歯学博士(歯科麻酔学、鶴見大学)
監査
高士 将典 先生
東海大学伊勢原病院東洋医学科鍼灸部、元・東海大学大磯病院東洋医学科鍼灸部、鍼灸師、薬剤師
三津 石裕士 先生
元・石油公団、工学修士(資源工学、東京大学)